【白川間弓美(マゆみ)さん】

弱点を強みに変えた発想の転換で、自信をつけて起業へ

Gaki-biz開設以降、西濃エリアでは起業を考える女性が増えているそうだ。それはなぜなのか。
2023年3月に開業届を出そうといままさに準備の真っ只中にある、カメラマンの白川間弓美(マゆみ)さんにその理由を聞いた。

「西濃地区は、起業したい人にとって非常にいい環境」

偶然かもしれない。このインタビューが行われた3月某日。2時間弱の間にGaki-bizを訪れていた相談者は全員が女性だった。

2022年に帝国データバンクが行った「全国女性社長分析調査」によると、岐阜県は女性社長の比率が5.8%で全国で最も少ないそうだ。しかし、Gaki-bizでの光景は全く違っていた。実際に「近年、女性の創業希望者の相談件数が急増している」と正田嗣文センター長は語る。

2018年7月のGaki-biz開所以降、女性の起業相談は18年度(9ヶ月)16件に過ぎなかったが、19年度は56件、20年度は76件に増加。21年度は214件で、相談者の6割以上を占めた。22年度は11月末までに139人が起業に至っている。

<ITアドバイザーの相談の様子>

これだけ増加している要因として「コロナ禍でパートや派遣の仕事が減り、新たな選択肢として企業を目指す女性が増えていること。支援体制が整っていること。起業した女性が地元で活躍していることがあるのではないか」と正田さんは分析する。

大垣は、Gaki-bizの創業相談に加え、大垣商工会議所主催の「創業塾」、大垣市の補助金など支援制度が充実している。今回話を伺ったカメラマンの白川間弓美(マゆみ)さんもGaki-bizの支援と「女性創業塾」の受講を受け、開業準備の最終段階に入っている。

「商工会議所のサービスもありますし、Gaki-bizは予約をすると無料で1時間の個別相談を受けられます。またスキルアップのためのセミナーも随時開かれています。悩みがあれば、具体的な解決策を提示してくれるので、一つひとつ不安を解消しながら進んでいけます。

創業塾の仲間とはその後も交流があり、会うと元気をもらえます。12月には創業塾の仲間2人とコラボイベントも開催しました。

様々なサポートがある西濃エリアは、起業したい人にとって非常にいい環境だと思いますよ」

<2022年の女性創業塾の様子>

被写体に寄り添い、撮影時間までも思い出にする記念日写真

池田町出身の白川さんは記念写真を得意とするフリーのフォトグラファー。カメラの世界を目指したのは、20代前半に初めて列席した友人の結婚式がきっかけだった。元々写真を撮るのが好きだったこともあり、「きれいに撮ってあげたいな」とフィルム3本を握りしめて参列をした。

「友人の花嫁姿にあまりに感動してしまって。3本では全然足りなくて、フロントに置いてあったフィルムを全部買い占めました。最終的に10本くらい撮ったんですけど、ちゃんと勉強したことがなかったので、何枚撮ってもきれいに撮れていなかったんですね。
それがすごく心残りで。花嫁姿をきれいに撮れるようになりたいというのがカメラマンになったきっかけです」

結婚式場や写真館で修行し、結婚式やお宮参り・七五三などの撮影を多く経験した後、2013年に独立。アルバイトをしながら、撮影の仕事を開拓していった。

<撮影に関するワークショップを多数開催してきた>

白川さんが創業を検討している時から、松浦プロジェクトマネージャーは相談に対応した。

「松浦さんに最初にご相談したとき、ボロボロ泣いたのを覚えています」と白川さんは少し恥ずかしそうに回想する。

どういう涙だったのか。
「自分が弱みだと思っていたものが強みになると教えてもらえました。「個性があっていいんじゃないですか」と私の撮影の仕方を肯定してもらえたんです。それで涙が出てきてしまって」

白川さんの撮る写真はとても温かい。それは被写体によりそい、それぞれの思いや撮影している時間を大切にしたいと考えているためだ。白川さんは「撮影している時間も含めて記念になるお手伝いができればと思って撮影しています」と語る。とても素敵な考え方だ。だが、白川さんは相談に来るまではそれを自分の弱点だと捉えていた。

「私は撮影する人のことを深く知り、どのようにして差し上げたらその方が幸せなんだろうとしっかりと感じ取った上で撮影したいと思っています。だから打ち合わせにも時間をかけたいタイプなんです。
ただその考え方を肯定的に取ってくださる方もいれば、早く撮ってほしいという方もいらっしゃいます。先輩のカメラマンが打ち合わせなしでも素敵な写真を撮るのに、私はお客様と話さないと不安で撮ることができない。効率が悪いことにコンプレックスを持っていました。カメラマンに向いていないんじゃないかと自分を責めていました」

その弱点を個性として評価してもらったことは白川さんの大きな自信になり、開業へと踏み出す原動力となったと白川さんは言う。

<ワークショップ参加者と撮影した一枚。本人は左上>

開業を決めてからも、撮影の時のように自分がどうしたら幸せに感じられるのだろうと、Gaki-Bizでの相談で自分の考えを確かめながら、白川さんはじっくりと準備を進めていった。

今は撮影のメニュー作りやそれを踏まえたホームページの制作に取り組んでいる。
「メニューを絞るということを教えてもらったのも新鮮でしたね。『何でもできます!』と言わないとお客さんが来ないんじゃないかと不安でしたが、松浦さんから『せっかく事業主になるのだから、自分がどう働いていきたいかを考えて、自分で決めていいんですよ』と教えていただきました。
私がやりたいことを書き出し、そこに松浦さんが客観的な目線でアドバイスをくださるというのを繰り返して、いいメニューが出来上がったと思います」

弱みと強みは表裏一体。見る角度を変えれば唯一無二の強みにもなる。コンプレックスを個性に変え、Gaki-bizからまた一人、女性起業家が誕生した。