【種田養蜂場】
背中を押し、ゴールまで引っ張っていってくれる
大垣市東前、住宅地に溶け込むようにたたずむ種田養蜂場。昭和23年の創業以来、転地養蜂によって日本各地で採蜜した天然そのままのハチミツを提供し続け、2度の農林水産大臣省に輝くなど高い評価を得てきた。
ここ数年は話題性のある商品を開発するなど新たなことに積極的にチャレンジしている。家族経営の小さな養蜂場はなぜ新商品を次々と繰り出ことができるのか。その背景には、Gaki-bizの存在があった。
■長年構想した合格祈願のハチミツを商品化
受験シーズンが本番を迎えると、「落ちないりんご」「キットカット」などなど、趣向を凝らした験担ぎグッズやスポットが注目を集める。
今から4年前の2020年1月、大垣市にある小さな養蜂場が独創的な受験生応援グッズを生み出した。その名も「努力の結晶 はちみつ 合格祈願セット」。
ハチが一生で集められるハチミツはわずかティースプーン一杯ほど。まさにハチの努力の結晶とも言えるハチミツを、受験生が積み上げてきた努力になぞらえた。さらにその“努力”をスプーンですくっても“落ちない”ように結晶化。御首神社で合格祈願奉納して提供した。
これは単なる言葉の遊びではない。ハチミツはスーパーフードと言われるほど、栄養が豊富。免疫力アップや疲労回復効果があるため、日頃から摂取することで風邪をひきづらくなる。さらにハチミツは胃腸への負担が少ない上に、すばやくエネルギーに変換されるので、運動時の栄養補給同様に、脳の栄養補給にも最適なのだ。
「試験会場で飴やチョコレートを食べると聞いたのですが、お砂糖は胃に負担がかかるし、エネルギーに変わるまでに1時間以上かかる。一方でハチミツは30分弱でエネルギーに変わる。持ち運びの課題はありますけど、できればハチミツを試験の合間に食べてほしいですね」と種田養蜂場の種田敏徳社長は笑う。
受験生にハチミツを、というアイデアは、何年も前から種田社長の頭の中にあった。しかしながら、夫婦2人で切り盛りしている小さな養蜂場で新たなチャレンジをするのは簡単なことではない。ノウハウもなく、一歩を踏み出せずにいた。
アイデアを形にすることができたのは、「Gaki-Bizさんの力以外の何ものでもない」と種田社長は感謝する。「合格祈願のハチミツを作ってみたいと話した時に、正田嗣文センター長が『あまり他には見ない商品ですね』『面白いですね』と興味を持ってくれました。その言葉にすっかり乗せられてしまい、じゃあやってみようかと」。
決断から商品化までのスピード感にも驚いたと種田社長は続ける。花などの開花時期に合わせて岐阜県や三重県、北海道など国内各地を移動してハチミツを採る”転地養蜂”を行う種田養蜂場では、毎年夏に6トントラックに200個近い巣箱を積んで北海道へ移動をする。大遠征から戻ってから商品化に着手し、翌年の1月に発売。あっという間に完成した。
「私は翌年でもいいと思っていたのですが、正田さんから『今年やりましょう』と言われて、『えっ、間に合うんだ!』という感じでしたね。例えばパッケージのデザインも私たちだけではなかなか進まないのですが、Gaki-Bizの皆さんが色々とアイデアを持ち寄ってくれるので一気に形になっていく。
通常の仕事と並行して新たなことを進めるのは大変ですが、「今度はここまでやってみましょう」「次はこれを決めましょう」とこちらの状況に合わせて無理のない範囲の宿題を出してくださるので、一歩一歩ゴールにたどり着けました」
このユニークな商品は、Gaki-Bizを通じてプレスリリースを行ったことで新聞など多くのメディアで紹介された。「新聞を見た学習塾にまとめてご購入いただきました。例年は太宰府天満宮で購入したお守りを塾生に配っていたのだけど、その年はコロナ禍で行くことができなかった。地元で面白い取り組みをしているので、今年はこのハチミツにしようと採用していただけました。発売初年度から完売状態になり、励みになりました」
■SDGs商品が、ハチミツの見せ方を広げる
翌年には、天然のみつろうラップ「包蜜」の開発に取り組んだ。ミツバチが巣を作るために分泌するみつろうをオーガニックコットン生地に染み込ませた、繰り返し使えるサスティナブルな食品保存用のラップで、脱プラスチックが世界的な潮流になる中、従来の使い捨てラップの代替品として注目されている。
「ハチミツは自然の恵みでもあり、地球環境の保全は事業を続ける上でも重要なテーマです。養蜂場として何かできないかとずっと考えていました。妻はニュージーランドやオーストラリアにみつろうラップというものがあるとかなり昔から興味を持っていたようですが、いざ商品化するとなると時間もお金もかかるので二の足を踏んでいました。
「努力の結晶」が一段落した頃、Gaki-Bizさんに相談してみたところ、『素敵ですね。高まるエコ意識のニーズも捉えられそう』と正田さんのいつもの元気な言葉で後押しされて、とにかく一度やってみようと踏み出すことができました」
「包蜜」は妻の拓子さんが一つひとつ手作りしている。「例えばパッケージも既存の袋に自分たちで印刷できるよう提案してくださったり、極力開発費を抑えられる方法を考えてくださるので低リスクでチャレンジできました。
本当に小さなことですが、お客さまからお子さんがみつろうラップに興味を持ったことをきっかけに家族でSDGsの勉強をしたという話を聞いた時には、作ってよかったなと感激しました」
食品以外の商品を作ったことで、思わぬ効果があった。これまでのイベント出店は食品を扱える場所に限られていたが、みつろうラップできたことで、別の切り口のイベントに参加することが可能になったのだ。
「SDGsがテーマのイベントにみつろうラップを出品ほしいとお声がけをいただいて、ついでにハチミツも持ってきていいですよとか、あべこべなことが起こっていますが、ハチミツの見せ方の可能性が広がったのは大きかったですね。事業の幅が広がりました」
■Gaki-Bizがハブになることで、安心してコラボできる
高品質な種田養蜂場のハチミツはもともと多くの飲食店で使われていた。さらに販路を広げたいと模索する中で、Gaki-Bizと大垣西濃信用金庫が支援しているご当地パン「ガキパンプロジェクト」の第4弾として参画することに。大垣市内の「ベーカリー ツキアカリ」「ブーランジェリー・アンプ」「ベーカリー穂の香」「パン工房まあさ」の4軒のパン屋さんが種田養蜂場のハチミツを使った創作パンを製造・販売するコラボレーションが実現した。
この企画は大好評で、各店舗で完売が続出。2000円以上パンを購入したレシートを持参すると、先着88人に50gの小さなハチミツをプレゼントする“スタンプラリー”も実施したが、準備していたものが早々になくなってしまうほどの大盛況だった。
「プロの料理人にうちのハチミツを使ってもらえるのは本当に嬉しいこと。特に妻はパンがすごく好きですし、各店舗が種田養蜂場のコーナーを作ってくれたことにもとても喜んでいました。それぞれのお店に買いに行って食べましたが、特徴が違って美味しかったです。
コラボの話はこれまでにもあったのですが、なかなかうまくいきませんでした。Gaki-Bizさんが間に入ってくださることで、初対面の方たちとも互いに安心して企画に取り組むことができます。今回は4つのお店と一気につながりを持つことができ、ありがたいかぎりでした」
イタリア料理店「オステリアルビーノ」さんとは、ウナギの炭火焼きと種田養蜂場のハチミツのソースを組み合わせたコラボメニューが実現した。
「クリスマスの時期だったので、正田さんの発案でみつろうのキャンドルでテーブルを華やかに彩ることにしました。私たちもみつろうのキャンドルを作り始めた時期だったので、はちみつだけではなく、キャンドルもアピールすることができ、Win-Winなコラボレーションになりました」
これからもGaki-Bizの力を借りながら、挑戦したいことがあると語る種田社長。
「最初は、私たちのようなレベルの低い相談でいいのかなと思っていました。でも正田さんが『待っていましたよ』と毎回温かく迎えてくださるので、小さなことでも気軽に相談できます。
私たちにとってGaki-Bizは最初の一歩を踏み出す後押しをしてくださり、なおかつ踏み出した後はゴールまで引っ張ってくださる存在。アイデアがあっても何から手をつけていいかわからない時にも、一つずつ具体的にやるべきことを示してくださるので、本当に心強いです」