【にこにこ塾】
子どもたちが自分らしく過ごせる塾。唯一無二の価値を地域との相乗効果で強化

にこにこ塾。
その名前の通り、子どもたちが安心して、笑顔で過ごせる学び場が大垣市にある。
塾を主宰しているのは、30年にわたり岐阜県内の小中学校で教員をしていた谷口としえさん。「長く教員生活を送って来た中で、集団生活が苦手な子や授業についていけなくなる子など、心の面、学習面でいろいろな困りごとを抱えた子どもたちの姿を見てきました。しかしながら、1クラス30人いる中で担任の先生がすべての子どもたちのペースに合わせることは難しい。もちろん、各学校が努力をされていますし、私自身も努力をしてきました。ただどうしても限界があり、取り残されてしまう子が出て来てしまう状況があります。子ども一人ひとりに寄り添う場所を作りたい。そう思ったのが塾を始めたきっかけです」。
2022年3月に一念発起して退職。翌4月に「にこにこ塾」を開業したが、5月の時点で生徒が3人しか集まらなかった。開業準備を進める過程でGaki-Bizの存在を知っていた谷口さんは、集客の相談に訪れた。
にこにこ塾は、子どもたちの個性や保護者の希望に合わせてカリキュラムを組み立てるため、授業内容は一人ひとり違う。塾オリジナルのプリントを使うこともあれば、学校の宿題を持ち込む子もいる。勉強を頑張ったら「ご褒美タイム」としてトランプで遊んだり、おしゃべりをしたりすることもある。それは、「学校の進捗に合わせるのではなく、その子が自分らしくいられるような勉強の仕方で、学力や自信をつけられるように」と考えているからだ。必要があれば保護者の相談に乗り、子どもたちにも「塾の日以外も困ったらいつでも来ていいよ」と自習室をオープンにしている。毎日のように勉強しにくる子もいるという。

いわゆる学習塾とは一線を画しているが、Gaki-Bizを訪れる前の谷口さんは「ぼんやりと塾だ」というだけで、その違いを自覚していなかったそうだ。「どんな塾ですか」「どんなことをしていきたいですか」。Gaki-Bizの正田嗣文センター長の質問に答える中で、「自分のやりたいことや塾の強みを、『ああ、そうだ』と再認識することができました」と谷口さんは最初に相談した日のことを振り返る。
「塾は他にもたくさんあるので、集客は難しいのかなと考えていました。でも正田さんに『こんなにも一人ひとりに寄り添う塾は珍しいですよ』と強みを引き出していただきました。正田さんから色々と質問をしていただく中で自分のやりたいことが言語化されていき、他の進学塾と差別化できたことは非常に大きかったです。『この強みを活かして、必要な人に届くようにPRしていきましょう』と励まし、応援していただいて、『じゃあ、頑張ろうかな』とすごく力になりました」
谷口さんの「子どもたちが自分らしく生きていけるようにサポートしていきたい」という思いに共感した正田さんは、具体的なPR策として無料ホームページの開設をサポート。谷口さんの思いやにこにこ塾の強み、塾に来てほしい生徒像などを整理し、言葉にしていった。
「正田さんに強みを引き出してもらえたので、『そこを全面に出せばいいんだな』と自分で文章を書きました。書いて、正田さんに見ていただいて、『ここにこんな写真があった方がいいですね』とアドバイスをいただきながら、ホームページを制作していきました。今でもホームページを見てご連絡をいただくことも多いですね」
同時に、正田さんはこのような塾を探している親御さんが検索しやすくなるようグーグル上の設定やプレスリリースの書き方のアドバイスを行った。プレスリリースを見た中日新聞から取材を受け、8月に記事が掲載されるやいなや問い合わせの電話が殺到した。
「お孫さんの塾を探していたというおじいちゃんおばあちゃんからの問い合わせも多くありました。『こういう塾を探していました』とおっしゃる方が多く、こんなにも需要があったのかと驚きました」
生徒数は2022年度中に40人までに増えた。「他にはない塾だから」と、大垣だけではなく、安八町や瑞穂市、垂井、揖斐などと遠方からも通ってくるという。
集客の悩みは早々に思い描いていた以上の成果を得たが、すぐに次なる悩みが出てきた。一人ひとりに寄り添うという理念を貫くために、入塾の希望があっても生徒を増やすことができなくなってしまったのだ。
「正田さんに相談したところ、教える以外の部分をプロにお任せしてはどうかとご提案いただきました。Gaki-Bizの相談事業者の中からバックオフィス業務やSNSの更新などを得意とする方と繋がりも生まれました。悩みが出てきた時に、すぐにGaki-Bizに相談にできるのは心強いですね」
■地域事業者の得意をマッチング。地域で支える唯一無二の塾に
「勉強だけではない」というのもにこにこ塾の大きな特徴だ。月に1回程度、絵画、創作活動、スポーツなどの体験活動を行なっている。
「いろいろな世界の人とつながりを持って、さまざまな体験をすることで、自分の好きや得意を見つけるきっかけを作り、勉強以外にも可能性があることを知ってほしいと考えています。それで、『先生をしてもらえる方はいらっしゃいませんか』と正田さんに相談しました」
正田さんはGaki-Bizのネットワークを活かして子どもが興味を持ちそうな得意を持つ事業者を紹介。ソーシャルアート作家の土井田一将さん、MojiBa®︎アーティストの浦上愛子さんにはアート教室を、Mottoスポーツ塾の臼井美由紀さんに運動教室を開催してもらうなど、体験活動の大半の先生はGaki-Bizのネットワークからのご縁なのだそうだ。
「子どもたちもとても楽しんで参加していますよ。土井田さんには5回ほどアート教室をしていただいて、絵をやってみようという子や、絵を褒められたことで自分に自信を持てるようになった子もいます。こうした経験をすることで、学校でも自信が持てるようになったり、少しでも子どもたちの将来のプラスになればと考えています」

「私自身も子どもたちといるのは楽しいので、毎日がとても充実しています。その反面、週に数回の塾ではまだまだ足りないなとも思います。もっと子どもたちのために自分に何ができるのだろうと常に考えています」
にこにこ塾での日々の実践を通じて、教育や子どもたちを取り巻く環境について考え続けている谷口さん。最後に、これからの地域がどうなってほしいと考えているのかを聞いてみた。
「子どもたちにはそれぞれに良さがある。長所を伸ばし、子どもたちが子どもたちらしく生きていける、『そのままでいいんだよ』と認められる社会になれば、もっと生きやすくなるんだろうなと思います。正田さんからは子どもたちのために何かしたいという企業や人が多くいらっしゃると聞いているので、Gaki-Bizさんの力を借りながら、そういう方たちとつながりを作って、子どもたちの将来の選択肢が広がっていったらいいですね」
生きづらさを感じているのは、子どもたちだけではない。自分の得意を活かして、自分らしく生きられる社会。夢物語に聞こえるかもしれないが、にこにこ塾やGaki-Bizのように、悩みに寄り添い、強みを引き出すハブがあれば、実現は可能かもしれない。
