【岐阜・大野町まごころ菓柏鳥堂】
コロナ禍を逆手に、SNSで話題となるお菓子を開発
まもなく創業100年を迎える老舗和洋菓子店「岐阜・大野町まごころ菓柏鳥堂」。地域とのつながりを深めたいと考えていた”4代目“は、相談に訪れたGaki-Bizで思いがけず商圏拡大につながる発想を得た。
■地域の魅力を映すユニークなお菓子
名鉄揖斐線と谷汲線の乗り換え駅として栄えた旧黒野駅から歩いて1分ほど。商店街の一角に岐阜・大野町まごころ菓柏鳥堂はある。昭和元年(1926年)創業で、現在の店主・鳥本豊和が三代目。修行を経て実家に戻ってきた、四代目に当たる兄・直幸さんと弟・和広さんとともに、受け継いできた伝統に現代の感覚とそれぞれの職人の個性を加えて常に新たなお菓子作りに挑戦している。
店頭には、創業時から販売している最中や季節の和菓子のほか、フルーツ大福やプリンなど和洋幅広いお菓子が並ぶ。大野町特産の富有柿入りのクリームをやわらかな生地で包んだ「ふんわり柿姫」や大野町出身の戦国武将・竹中半兵衛をキャラクターに使用した「もっちり半兵衛」、黒野駅で見られた赤い電車をモチーフにした「黒野ラスク」など、地元の食材や歴史を生かした商品も多い。取材している間も、入れ替わり立ち替わりお客さまが訪れる。地元の人に愛されているのが伝わってくる。
取材に訪れたのがバレンタインシーズンだったこともあり、色とりどりのお菓子の中でも一際目を引いたのが「銅鏡チョコ」「家紋チョコ」だ。
これは、子どものころから歴史が好きだった直幸さんが「いつか歴史に関係あるお菓子を作りたい」と開発した商品。第一弾となった「銅鏡チョコ」は、大野町には古墳が点在しており、銅鏡が出土していたことから着想を得た。
翌2020年には大河ドラマで『麒麟がくる』の放送がスタート。それにちなみ、主人公・明智光秀や、大野町で生まれた竹中半兵衛ら、岐阜にゆかりのある武将の家紋をかたどった「戦国武将家紋チョコ」を開発した。同じ商店街にある近藤石材店に、チョコを流し込む型の原型を製作してもらい、明智光秀、竹中半兵衛、織田信長、斎藤道三の4種類のチョコを発売した。
取引のある金融機関からGaki-bizを紹介されたのは、「銅鏡チョコ」の販売を始めた頃だった。直幸さんは「無料なら、試しに行ってみようか」と訪問。そこで、センター長の正田嗣文さんから「いまどのような取り組みをしていますか」「どんなことを今後やりたいですか」「困っていることはないですか」と聞かれ、「お客様とのつながりを持ちたいので、何かイベントはできないですか」と相談する。当時はまだコロナ禍前。正田さんから店舗にあるスペースを有効活用して、作る楽しみを提供する「お菓子教室を開いてみてはどうか」との提案を受け、銅鏡チョコの型を利用したワークショップを開催することにした。
その後も、月に1度のペースでGaki-Bizに通い、商品のプロモーションについてもアドバイスを受けた。「僕たち職人は商品を作るまでが仕事。いいものができればそこで満足してしまうところがあります。Gaki-Bizにはそこから先の売るという部分をサポートしていただき、商品の価値をより広げていただけるのでありがたいです」
バレンタイン・ホワイトデーのギフトとして売り出した「銅鏡チョコ」「家紋チョコ」は、Gaki-Bizのデザイナーとともにパッケージにも力を入れた。
「銅鏡チョコのパッケージは、ちょうど「鬼滅の刃」が盛り上がっていた時期だったので、和菓子との親和性も高い市松模様を取り入れて、文字もレトロな可愛い感じになるデザインのアドバイスをいただきました。一方の家紋チョコは、チョコレートに入っている4つの家紋をあしらってカッコいいデザインに。それぞれの商品に合ったデザインになったと思います。自分の思いをきっちりと形にすることができて、とても気に入っています」
さらに「家紋チョコ」発売時には、正田さんのアドバイスを受けて情報発信のサポートをいただき、プレスリリースを作成・配信した。
「こだわったポイントなどをわかりやすく内容をまとめてくださるので、メディアに取り上げてもらいやすい。この時は、中日新聞、岐阜新聞、中部経済新聞に取材にきていただき、ラジオにも出演しました。非常に反響が大きかったです」
また、新聞などで興味を持った遠方の方に購入していただけるよう、通信販売もスタートした。
「コロナ禍でなかなかお店に来てもらえない状況だったので、販路を増やしたいと相談したところ、ぎふネットショップ総合支援センターを紹介していただきました。そこの先生に教えていただきながら、yahoo!ショッピングにお店を立ち上げました。それ以前は地元のお客様が多かったのですが、新聞やネットの記事を見た遠方の方からもお問い合わせ・ご注文をいただきました。商圏を広げることができて、非常に感謝しています」
■Gaki-Bizの協力のもと、SNSで話題を呼ぶ商品を開発
「銅鏡チョコ」「家紋チョコ」の開発がひと段落着くと、直幸さんはすぐに次の挑戦を始めた。
「和菓子屋は、夏場の売上が下がります。特に餡子を使ったものは売れないんですよね」
その対策として柏鳥堂では、葛で固めた溶けない不思議なアイス「葛アイスバー」を販売し、好評を博していた。
その話を聞いたGaki-Biz正田センター長は、夏場に使用していない「家紋チョコ」の型を活用して、家紋モチーフの葛アイスを作ってみてはどうかと提案する。さらにSNS映えも意識して、「七色の虹のようにカラフルにしてみてはどうですか」とカラーバリエーションを増やすことも勧めた。
当時販売していた「葛アイスバー」は、いちごミルク・みかん・桃・パイン・ミルク抹茶小豆の5種類。その中から、みかんと色の似ているパインをのぞいた4つの色を採用し、新たに3色を加えることにした。
正田センター長とアイデアを出し合いながら、直幸さんは職人として味と見た目の両面にこだわり、何度も試作を重ねた。子どもから大人まで、味の好みの違う人に広く楽しんでいただけるようバランスを考え、最終的にぶどう、ブルーハワイ、コーヒーの3色を追加。全7色、4種類の家紋の葛アイスが出来上がった。
商品名は「KUZシャキン」と命名。「正田さんからいくつかアイデアをいただいて、冷たさと武将の刀がぶつかり合う音を表現できている「シャキン」に決めました」。
正田さんの目論み通り、ユニークで、映える「KUZシャキン」はSNSで度々話題となった。
「歴史や武将が好きで、わざわざ買いに来てくださる方もいます。ある日、突然オンラインで大量の注文が入ったことがあったので調べてみたら、twitterで紹介してくださった方がいたということもありました。僕も歴史が好きなので、全国にこんなに歴史が好きな方がいるんだなとうれしくなりますね」
2023年の大河ドラマは徳川家康が主人公。「家紋チョコ」「KUZシャキン」は再び話題を集めそうだが、直幸さんは「今年は地域のお客様とのつながりを強化する年にしたい」と話す。
「私たちのお店は地域密着が基本です。コロナも落ち着いて、少しずつお店に来ていただくお客さまも増えてきました。当初Gaki-Bizにご相談したイベントは、コロナ禍の影響でまだ1回しか開催できていないので、地域のお客さまに喜んでいただけるイベントがまたできたらと考えています」