【アグリピア】

Gaki-Bizも「ごちゃまぜ家族」の一員。経営者の人生の使命を理解した上で伴走してくれる

「正田くん」

海津市で農福連携事業を手掛ける株式会社アグリピアの寺倉誠代表は、Gaki-Bizの正田嗣文センター長のことを親しみを込めてそう呼んでいる。

「初めてGaki-Bizに相談に行った時から、すーっと通じ合うところがあって、すぐに君付けで呼べる関係性を築けました。仕事の相談だけではなく、個人的な人間関係ができているので、何も隠すことなく、安心して話ができる。正田くんはたくさんの知識や経験を持っているので、何かを相談をすると、クリックレスポンスでポンポンと選択肢を示してくれる。だけど、それが押し付けがましくない。最終的な決断は僕に委ねてくれるので、その距離感が僕には心地いいんですよ」

2012年に「アグリピア農場」の名称で障がい者就労継続支援B型事業所を開設したアグリピアは、障がい者の「働く」を農業を通じて支援してきた。2023年に名称を「たのしいフルハウス」に変更したが、この名前の由来となったのはアメリカのコメディドラマ『フルハウス』。事故で突然妻を亡くした男が、友人や義理の弟たちに助けられながら3人の娘を育てる「ごちゃまぜファミリー」の愉快なドタバタ生活が、アグリピアと重なると感じたからだ。寺倉さんにとっては、利用者もスタッフも地域の人も、事業所に関わる人はみんな家族。その中には正田くんも含まれていると話す。

■利用者のアートを「貸絵」サービスとして事業化

寺倉さんが金融機関の紹介で初めてGaki-Bizを訪れたのは、Gaki-Biz開設直後の2018年。障がい者就労継続支援B型事業所の利用者を増やすための施策を相談したのが最初だった。

たのしいフルハウスでは、知的障がい、精神障がいなどさまざまな特性を持つメンバーが協力しあって、小松菜、水菜、リーフレタスなどの葉物野菜の水耕栽培に取り組んでいる。2015年からは障がい者アートに本格的に取り組み、布絵本の制作などを行ってきた。Gaki-Bizには月に1回経営全般の課題や悩みを相談してきたが、特にソーシャルアート活動チーム「芽夢」、企業・障がい福祉事業所向け研修を行う「ハッピーアグリセンター」の2つの事業はGaki-Bizの存在によって飛躍的に広がった。

近年、障がいのあるアーティストの作品に注目が集まっている。社会の中では不自由を感じる特性も、アートの世界では個性、唯一無二の才能として表現されることが少なくない。利用者がフルハウスで1ヶ月間農業に従事した場合に得られる平均工賃は21,993円(2023年度実績)だが、アートの才能を活かすことができれば工賃を上げることが可能だ。実際に、知的障がいのある作家が手がけたアートを、さまざまなプロダクトとして展開し、作品のロイヤリティを作家に支払う事業を手掛ける会社「ヘラルボニー」では、収入を上げて確定申告をする作家も出てきている。

当初、芽夢では、布絵本の制作を制作し、小学校などで読み聞かせを行なってきたが、利用者の自己啓発の意味合いが強かった。ヘラルボニーなどの事例を知る正田さんは、芽夢の活動を事業化すること見据えて、Gaki-Bizの相談者でもあるソーシャルアート作家の土井田一将さんを紹介。自身も吃音症の障がいを持つ土井田さんは障がいの程度や個性に合った創作手法を共に考え、利用者それぞれの個性を育てていった。さらに正田さんは、出来上がった作品を貸し出す「貸絵サービス」を提案。毎月1つの作品を企業に貸し出し、社内に展示してもらうサブスクリプションサービスをスタートさせた。

「サブスクの価格を決めるときも正田くんに相談しました。1ヶ月1、2枚貸し出して3000〜5000円の相場感を事例とともに情報をもらったのですが、障がい者アートの今後の可能性も考えて1ヶ月1万円にしました。

僕は自分で決めたい人間なので、Gaki-Bizに相談に行く時もおおよその答えは決めているんです。正田くんは否定的なことは口にしないのですが、少し惜しいなという表情をすることがあるんですね。彼の反応を見たり、提案を聞いたりしながら、自分のアイディアをブラッシュアップしていくことで、クオリティーをあげることができるので、本当にありがたいです」

芽夢のサブスクサービスは強気の価格設定にもかかわらず、早速岐阜県内の企業での導入が決まった。今後もさらに広がりそうだと寺倉さんは笑顔を見せる。

障がいのある人もない人も成長できる研修プログラム

企業向け研修プログラムも、Gaki-Bizの支援を通じて実現した事業だ。アグリピアが行ってきた農福連携の取り組みは、岐阜県でも例が少ない。そのため、以前から県内外から視察に訪れる人が多かった。そこで、正田さんは農場見学や農福連携についての講演活動をビジネス化することを提案。2023年にハッピーアグリセンターという新たな部門を立ち上げ、見学、講演プログラムのほか、障がい者の雇用を検討している一般企業などに障がい者との交流や農業を体験できる研修プログラムを提供し始めた。

この企業向けの研修プログラムは、農場で働く利用者が講師(えびす先生)となって研修参加企業の社員や子どもたちへ水耕栽培のやり方を教え、一緒に作業を体験することで、農業や障がい福祉についての理解を深めてもらうことを目的としていた。

しかし、この研修は思わぬ効用をもたらした。種付けや苗の大きさに合わせた定植方法を教えるという経験が利用者の自己有用感の向上につながり、大きな自信をもたらしたのだ。「自分が学んできたことをどう伝えたらわかりやすいか」考えることも、仕事への意欲につながる。もちろん、この“講師料”も利用者に還元されている。

寺倉さんはこのハッピーアグリセンターの事業を拡大し、「県内の企業の方が障がい者と直接関わって座学では得られない新たな気づきを得ることで、将来の障がい者雇用に活かしてほしい」と願っている。ハッピーアグリセンターの研修も、フルハウスで育てた野菜も、芽夢のアート作品も、社会と障がい者との接点を一つひとつ増やすことで、アグリピアが目指している「ごちゃまぜ家族」「ごちゃまぜ社会」を作ることにつながると寺倉さんは信じているからだ。

「正田くんは、単にビジネスのアドバイスだけではなく、こうした僕の思いも理解して、同じような思いを持つ人たちとの縁も繋いでくれています。

中小零細企業は、会社=社長そのものだと思うんです。経営者の人生の課題というか、与えられた命題を解決するために商売をしているところがある。本来、プライベートにまで首を突っ込むのはコンサルタントの役目ではないかもしれないけど、正田くんには創業期の苦しい時期も全部知ってもらっているし、プライベートな部分もある程度は垣間見ている。それを理解した上で、第三者的な視点も持ちながら伴走してくれる。これからも一緒に成長していけたらと考えています」

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