【大成】

「黒子」に徹した100年から脱却。パッケージ刷新で売上2倍、社員が誇りを持てる会社へ

暖かくなってくると、むしょうに桜餅が食べたくなるのは私だけだろうか。
ひなまつりには、菱餅や三色団子。こどもの日には、ちまきや柏餅。お彼岸には、おはぎ。
和菓子は二十四節気や年中行事に合わせて、私たちの生活に淡い彩りと季節を運んでくれる。

養老町にある「有限会社大成」は、大垣市の老舗で修業をした職人が、大正8(1919)年に養老の地で創業して以来、4代にわたり和菓子づくりを受け継いできた。

しかし、100年以上地元に愛された企業でありながら、「大成」の名前を知っている人はそれほど多くないのではないだろうか。それも、無理からぬことだ。大成は店舗を持たず、BtoB(Business to Business)のメーカーとして、自社の名前を前面に出さず、和菓子の製造を行ってきたのだから。

大成の名は、パッケージの裏やパックに貼られたシールの製造者の欄に小さく書かれているだけ。スーパーの和菓子コーナーやコンビニのレジ横で目にして、従業員の家族でさえ、大成の和菓子だと気がつかないかもしれない。

▲旧パッケージ

「弊社のメインのお取引先は、公設の地方卸売市場なんです。直接スーパーなどの小売店とお取引をしているわけではないので、自分たちが作った商品がどこで売られているか、全てを把握できているわけではないのです」と北村佳士社長は説明する。

100年以上 “裏方”として和菓子を作り続けてきた大成だが、この2年ほどで少しずつその存在を知られるようになってきた。そのきっかけを作ったのが、大垣ビジネスサポートセンター(Gaki-Biz)だ。

事業承継した会社の“財産”を棚卸し

Gaki-Bizは何をしたのか。それを話す前に、北村社長が事業を引き継いだ5年前に時間を巻き戻したい。

その頃の大成は、3代目である叔父と、北村社長の母親が支えていた。しかし二人とも70歳を超えた頃から、ちらほらと会社を畳むという話が出始める。

当時は別の仕事をしていて、跡を継ぐ気はなかった北村社長だが、廃業の話が現実味を帯びてくるにつれ、「僕も和菓子でここまで大きくしてもらった。100年続いてきた家業を本当に潰してしまっていいのか」と心が揺らぎ始める。そんな折、母親から「継がないか」と正式に打診があり、覚悟を固めた。

2年間の引き継ぎ期間に、先代から集中的に仕事を学んだ。「だから、それほど不安があったわけではないんです。でも実際に経営者としてやっていくのは初めてだったので、相談相手がほしかった。他の分野から得られる情報やヒントもあるんじゃないか」と期待してGaki-Bizを訪れた。

「最初に相談した時は散らかっていましたよ。『あれもこれもやりたい』といろんな構想があったので、Gaki-Bizで整理してもらい、流れを作ってもらいました」

会社を引き継いだ当時、大成は何百種類の和菓子を作っていた。まずはそれを全て棚卸し、売れているもの・売れていないものを整理。会社の“財産”を伸ばしていこうと取捨選択を行った。

売れている商品の中で、北村社長が特に力を入れていきたいと考えていたのが「ちまき」だった。

「端午の節句の前の1週間ほどと販売期間は短いんですけど、大きな売り上げを上げてくれる商品です。同じ時期に販売される柏餅は機械で作れるんですけど、ちまきは機械化が難しい。だから和菓子メーカーは柏餅に流れている傾向にある。競合が多い土俵に乗っても、うちみたいな小さなところは勝てない。だから、手間がかかっても、うちの職人の技術が活かせるちまきで勝負しようという結論に至りました」

先代からずっとこだわって作ってきた商品に自信がある。そこを変える必要はない。「さらに売り上げを伸ばすためには、選んでもらうためのアイキャッチが必要ではないか」と北村社長は考えていた。

というのも、大成で作られたお菓子が私たちの手に届く過程には、多くの“関門”があるからだ。先述の通り、大成の取引先は、公設の地方卸売市場。ほとんどの商品は卸業者に販売する。そこから、卸売業者が仲卸業者へ販売し、さらに仲卸業者から小売店(スーパーやコンビニ、道の駅、八百屋など)へと商品が渡っていく流れだ。もっと細かく言えば、卸業者は一次卸、二次卸、三次卸と多段階化している。

「消費者の皆さんに商品が届くまでには、仲卸業者さんやスーパーのバイヤーさんなど何段階もの関門を突破しなければいけません。星の数ほどある和菓子の中で、どうしたら弊社の商品を選定してもらえるのか。そればかりをずっと考えていました」

タイセイクン誕生。デザインの力で”関門“を突破

北村社長の悩みを聞いたGaki-Bizの正田嗣文センター長は、どこの会社のものか一瞬でわかるようなロゴまたはキャラクターなどを作り、それを活かしたパッケージに変更することを提案した。「若い世代にも手に取ってもらえるパッケージにしたい」という北村社長の要望をもとに、Gaki-Bizでデザインアドバイザーを務める岡田庸平さんが、その場で一緒に具現化のサポートを行った。

そうして、『タイセイクン』という和菓子を模した会社のキャラクターが完成。2025年の端午の節句からタイセイクンをあしらったオリジナルパッケージのちまきの販売を開始した。

オリジナルの袋を制作するにあたり、社名も大きく打ち出すことにした。「100年の歴史があることも、私たちの財産です。それをもっと出していくべきだと考えました」(北村社長)

それまではバイヤーが選べるようにと、中身は同じで、袋入りとパックの2種類のパッケージを用意していたが、2025年は袋入りだけに絞った。格段に製造の手間が減ったにもかかわらず、売上は前年比の約2倍に伸びた。

「パパの会社だ!」 100年間の黒子が家族の誇りになった日

パッケージの重要性に気がついた北村社長は、ちまき以外のパッケージやシールを段階的にオリジナルに変更していった。

卸売業者を介さずに直接取引をしている学校給食や病院、老人ホームへ納品するための段ボールにも、「せっかくなら」とタイセイクンを印刷した。

「箱を目にした人に『なんだこれ?』『和菓子のキャラクターなんだ!』みたいな感じで認知してもらえれば、地道ですけど『和菓子の大成』を少しずつ広げていけるかなと。今回のちまきの成功体験を経て、会社のブランディングを意識するようになりました」

配達する会社のトラックや会社のユニフォームにも、タイセイクンを入れようと検討しているそうだ。さらに今後はGaki-Bizのサポートを受けながら、タイセイクンを使ってSNSなどでの情報発信にも力を入れていきたいと考えている。

売上が伸び、作業効率が上がったこと以上に、北村社長が手応えを感じていることがある。それは、社内の空気の変化だ。

「職人の世界は、自分のやってきたことが全てだと思っているところがあります。私は後から入ってきた立場なので、従来のやり方を変更しようとする時にはひたすら彼らとぶつかりました。
今回のちまきで、作業負担が軽減しているのに、売上が増えたことは職人の皆さんも実感しています。そういう意味で、新しい提案が通りやすくなってきています」

そう話しながら穏やかに微笑む北村社長からは、どことなくタイセイクンと同じほっこりとした雰囲気が漂う。

「つい一週間ほど前の話なんですけど、社員の子どもがスーパーでタイセイクンを見かけて『パパのところだよね?』と駆け寄っていったそうなんです。その姿を見て、『誇りに思えた』と話してくれました。それを聞いて、僕も心の底から嬉しかったです」

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