【トーカイサポート】

お客様目線の新サービスが大反響!! 事業の新たな柱となるBtoCへも派生

新型コロナウィルスの世界的な感染拡大によって、製造業は大きな打撃を受けた。

しかし、苦しい状況の中でも、With/Afterコロナを見据えて設備投資や販路開拓に動き出す事業者がいる。不破郡垂井町で精密板金加工を営むトーカイサポート株式会社もその一つだ。

導入した最新の機械と創業以来培ったノウハウ、Gaki-Bizとの出会いにより誕生した新サービスが予想以上の広がりを見せている。次なる事業の柱となるサービスを生み出せた背景には、Gaki-Bizによるマインドセット改革があった。

製造業が陥りがちな“機械営業”からの脱却

「トーカイサポートさんは、何を売っているのですか」

約1年前のこと。トーカイサポート株式会社の兒玉洋昌専務は、取引先の金融機関から「とにかく1時間だけお時間ください」と誘われて訪れたGaki-Bizで正田嗣文センター長からこう問いかけられた。雷に打たれたような衝撃だった。

「製造業にはありがちなのですが……。導入している機械のパンフレットを持っていって、『こんな機械が入ったので、何か仕事はないですか』と営業するのが、社長である父の代から30年以上かけて培ってきたスタイルでした。これまではそれが当たり前でしたし、業界内ではそれで話が通じていたので、売り方に困っているという認識はありませんでした。でも考えてみれば、これまで私たちが売っていたのは工場にある“機械”であって、“技術”でも“品質”でもなかったんですよね。それに気づかせてもらったことが何より大きいです」

「完成総合力」が武器のトータル加工メーカー

不破郡垂井町にあるトーカイサポート株式会社は、兒玉専務の祖父である嘉典さんが1974年に創業し、まもなく50周年を迎える。94年に現社長の嘉朗さんが精密板金加工業を開始。難易度の高いとされる「スポット溶接技術」を活かした産業用モーターコア部品を1本目の柱、設計から多種多様な鋼材加工、塗装、組み立て、検品までを社内で一貫生産する、一戸建て住宅向けの玄関ひさしを2本目の柱として、それぞれの分野で圧倒的な地位を築いてきた。

コロナ禍でも安定した業績を維持できたのは、社内一貫生産という強みがあったからだ。メーカーが部品・資材の調達を行う場合、抜き、曲げ、溶接など、加工内容に合わせた業者へそれぞれ発注する必要があり、窓口の数が増えるほど工程管理の負荷は増す。

トーカイサポートは設計から完成品までをトータルで作り上げるので、工程管理の負荷やコストを軽減することができる。加えて、各工程における解決すべき課題を収集できるので、設計の段階から完成を見据えた製造方法の提案やQCD改善による顧客満足度の向上が可能だ。

コロナ禍でも攻めの姿勢で、革命的な機械を導入

業績が好調だからこそ新たなチャレンジをしたい。兒玉専務は3本目の柱を育てるため、岐阜県では初、全国でも50 台ほどしかない最新のレーザー加工機を導入し、新たな取引先獲得を目指すことを決断する。Gaki-Bizを知ったのは、ちょうど新しい機械のカタログ持って客先を回り始めた頃だった。

新しいレーザー加工機は何が革新的なのか。形鋼やパイプを使って部品を製造する場合、これまでは材料を切断し、プレス機を使って金属を切り出したり、穴をあけたりと、熟練工が手作業・手加工で仕上げていた。加工のたびにバリと呼ばれる金属の付着物を除去する必要がある上、どんなに熟練の職人が作業したとしても手作業ゆえに品質が安定しないという課題があった。新たに導入したレーザー加工機は、切断、穴あけの工程をワンステップで行うことができ、熟練工も、プレス加工時の金型も、加工のたびに必要になるバリ取りも不要になる。

ここまではこのレーザー機を導入すればどこの会社でも実現できる加工だが、さらにトーカイサポートでは設計から一貫生産をしてきた知見を生かし、部品の数を少なくする設計や「はめ合い構造」による溶接・仕上げ作業の工数削減を達成。他社より一段階進んだ作業の簡略化を実現した。 例えば、2本の角パイプを直角につなぐ場合、従来工法ではそれぞれのパーツに穴をあけて、穴の位置をあわせて溶接によってつなぎ合わせる。これに対してトーカイサポートが提案するはめ合い構造による新工法は、釘を使わず柱を結合させる数寄屋づくりのように、あらかじめ設計の段階でパイプの角部をホゾ溝形状にして製品を組み立てる。そうすることで、位置決めが容易になり組み立ての手間が削減できる上、強度も高まるので、一石二鳥だ。

新たな機械と“営業革命”で生まれた新サービス

「売り方を変えてみませんか?お客さま目線の売り方に変えましょう」

同業者であれば、前述の説明で新工法がいかに革新的かを理解できるのだろう。しかし正田さんも、おそらく大手メーカーの調達担当者も、それほど機械を熟知しているわけではない。せっかくの画期的な工法も伝わらなければ意味がない。

「この機械によって、トーカイさんはお客さまには何が提供できるようになるのですか」

「お客さまにはどのようなメリットがあるのですか」

正田さんからの問いかけに答えるうちに、兒玉さんは普段の営業にもこのような説明が必要なのだと感じるようになる。「その機械で何ができるか分からないのに、どんな仕事を出していいかわからないですよね」と兒玉さんは苦笑いする。

何ができるかを明確にするため、正田さんは、新たな工法を「形鋼・パイプ加工革命」というサービスとして販売することを提案する。「チラシを作る時にも、『兒玉さんがお客様だったら、どういう提案をされたら興味を持ちますか』と聞かれて、コロナ禍でお客さまも仕事が減っている状況なので、少しでも安い方が良いだろうと。生産性や売上がアップすることよりも、コストがダウンすることを強調しよう」と製造コスト、設計コスト、管理コストのトリプルダウンを前面に打ち出だすことにした。

2022年2月に行われた大垣商工会議所が主催の「新商品・新サービス合同プレス発表会」で新サービス「形鋼・パイプ加工革命」として発表。中部経済新聞、岐阜新聞で紹介された。

「提供できる価値が明確になったので、お客様にも理解してもらいやすくなりました。これまではお見積りを出しても、それきりで商談に進まないことがほとんどでした。今では逆にお客さまの方から『こういうことはできますか?』と具体的な相談いただく機会が増えてきましたね」。毎年参加している商談会でも、「明らかに周りの反応が変わった」と兒玉さんは顔をほころばせる。

この機械を製造販売している株式会社アマダからも「トーカイサポートさんが第一人者となって、私たちの機械でできることをPRしてくださっているので、機械の販売につながります」と喜ばれているそうだ。

4つ目の柱となるトレーラーハウス事業

Gaki-Bizを訪れたのと同じ頃、もう一つの良い出会いがあった。以前から知り合いだった一般社団法人モバイルユニット普及協会の奥村靖代表とトーカイサポートの兒玉嘉朗社長が1年ほど前に偶然再会し、トレーラーハウスを見学させてもらう機会に恵まれたのだ。

聞けば、奥村さんは設計から、材料の調達、鋼材加工業者や塗装業者への発注まで全部一人で制作されているとのこと。トーカイサポートには一戸建て住居の玄関の庇のような大きなサイズの製品を生産できる工場があり、トレーラーハウスのフレームにも十分対応できる。「レーザー機が導入されたらトレーラーハウスに使えるんじゃないかと目標にしていました」。

22年2月、「形鋼・パイプ加工革命」のはめ合い工法を活かしたトレーラーハウス事業をスタート。今は11月の展示会で発表するためにGaki-Bizに相談しながら準備を進めている。「トレーラーハウスはコロナ禍で需要が高まっていますし、用途も広がっていて可能性を感じています。またここまで大きなものを作れるという、当社の対応力の幅をPRする材料にもなります」。兒玉さんはBtoC事業を始めることで、BtoBとのシナジー効果を期待する。

企業マッチングで地域の活性化を

Gaki-Bizに相談するようになって「売り方が変わったことは一つの明るい兆し」と話す兒玉さんだが、会社全体としては「まだまだ下請け体質が抜けきっていない」と課題を口にする

「トレーラーハウスは土台があった上で育てているのですが、長年下請けとして受け身でやってきているので、0から自社製品を社内で作ろうとしても体質的に難しい部分があります。私たちはものを作るのは得意ですけど、売ることに関しては素人に近いので、新たなことを始める時に何をどういう順番で進めたらいいのか分からないんですね。だから将来的には、Gaki-Bizの相談者でアイデアを持っている方たちと交流し、地域の活性化につながるような新たな事業を創出できればと考えています」