【マルニシ アトリエ刺繍】

本業を生かした刺繍サービスの新事業

昭和54年(1979)から関ケ原で衣料品の企画製造販売等を行う株式会社マルニシ。元々は縫製工場としてスタートした会社だが、変化の激しいアパレル業界に合わせ、卸売、医療衛生用品の販売など新しい分野へのチャレンジを続けてきた。
新型コロナの感染拡大でアパレル業界に大きな変化が訪れる中、同社が着目したのが刺繍サービスだった。イラスト等からデータを起こし刺繍を施すサービス。これを社内で中心となって立ち上げた中嶋さんに、Gaki-Bizとの関わりについて伺った。

コロナ禍でEC市場が拡大する中、新たに始めた事業

新規事業『マルニシ アトリエ刺繍』の商品を販売するWEBショップ

アパレル業界はネットショップでの販売比率が拡大する中、コロナの感染拡大はその流れを加速させました。そこでマルニシでも新しい取り組みとして最初に考えたのはEC販売だったそうですが、同社の主力製品は60代以上の女性をターゲットとしたボトムス類。ネットとの親和性が低い年代であったため、今の商品をただEC販売するのではだめだ…と考えたそうです。

「EC販売するなら若い人をターゲットにしなければならないけど、一から若い人の服を仕入れるのは難しいし、だったら“贈り物”とか“プレゼント”という分野で何か売れるものはないかといろいろ探していたんです」

Gaki-Bizに行ったことで火を付けてもらった新規事業への思い

『マルニシ アトリエ刺繍』の主力商品・お絵描きを刺繍にしたトートバッグ

自分ひとりではアイディアに行き詰っていた中嶋さん。そんな折、たまたま大垣西濃信用金庫でGaki-Bizのことを紹介され、行ってみることにしたそうです。

Gaki-Bizでサポートを担当したのはプロジェクトマネージャーの松浦俊介さんでした。松浦さんは元々関市で中小企業をサポートしていたことがあり、関で包丁を作る会社や箪笥を作る会社の先行事例などを紹介。しかし、中嶋さんは当初戸惑ってしまったのだと言います。

「確かに教えていただいた先行事例は素晴らしかったのですが、当社にはそのような特別なものを作る技術はないし、売れるものがないじゃないかって思って一瞬落ち込んでしまったんです。でも、持ち帰って考え直してみたら、特別な技術でなくとも、汎用性のある私たちのような技術でも取り組めるようなことで、さらに弊社のアパレル業界で培った長い歴史を背景に売り出せるようなもので探せばいいんだと松浦さんの言っていることが理解できたんです。方向性が明確になった気がしました」と中嶋さんは話します。

導入したTAJIMAの刺繍機で刺繍を施す様子

そんな思いでネットサーフィンをしていて見つけたのが、子どもの描いた絵をデータに起こして刺繍にするサービスでした。

「これ面白そう!これならマルニシがこれまで培ってきた事業とかけ離れてないしできそう!」

思い立ったら即行動の中嶋さんは、早速、友達で刺繍機を使ってモノづくりをしている友達のことを思い出し、作り方を教えてもらいに行きました。そこで、刺繍機の導入を決意。刺繍事業のスタートラインに付きました。

Gaki-Bizと共に『マルニシ アトリエ刺繍』のコンセプト作り

“「想い」を刺繍で「思い出」に”というコンセプトがぴったりのお絵描きを刺繍に起こすサービス

“刺繍機を使って新規事業を行う”ということが決まった中嶋さんは再びGaki-Bizを訪れます。

そこからコンセプト作りが始まります。お客さんが描いた絵などを刺繍にするサービスを売るにあたり、コンセプト作りのために会社スタッフの協力の元、いくつかのキーワードを持って行きました。「糸」「紡ぐ」「想い」「思い出」など自分たちが新規事業で表現したい思いをリストアップし松浦さんに見せました。

そこから決めたのが、“「想い」を刺繍で「思い出」に”というコンセプトでした。中嶋さんは、自分の言いたいことがしっくり来とても気に入っている言葉なのだと言います。

出産祝いに、命名と手形・足形を刺繍にして残すサービスも開始

「事業を始めるにあたり、事業名を決めた方がいいですね」と松浦さんはアドバイス。そこから一緒にネット検索をし、商標にもひっかからず、他の事業者とも被らない名前で『マルニシ アトリエ刺繍』という名前に決めました。弥生さんは「お絵描き」という言葉を入れようかと考えていたそうですが、調べてみると「お絵描き」は事業名としてバッティングすることが多く、また、将来的にはお絵かきだけではない刺繍にも取り組んでいきたいという思いもあったため、松浦さんのアドバイスで「アトリエ」というワードを採用することになったそう。

ホームページやパンフレットも作成

Gaki-Bizのサポートで作ったコンセプトを元に作ったチラシとパンフレット

その後は、ホームぺージの作成やネットショップの立ち上げを行っていくことに。ホームページ作りはGaki-Bizから紹介のあった「ぎふネットショップ支援センター」に相談して行いました。

「無料で作ることができるホームページ作成ツールなどを教えてもらえたし、わからないことを丁寧に教えてもらえたので本当に助かりました。こういう施設があるということを教えていただいたGaki-Bizさんには感謝しています」

パンフレットやチラシの作成、Instagramでの情報発信などを精力的に進めていった弥生さん。刺繍機を導入したのが2022年2月ですが、その後も事業拡大に色々と動いていきます。

今の課題は『マルニシ アトリエ刺繍』の認知度を高めること

イオンモールのイベントに参加し、刺繍サービスの体験を実施

「まだまだ事業は立ち上がったばかりで、今は認知度を高める時なんです」と中嶋さん。現在はGaki-Bizに一緒に事業をできそうな方を紹介してもらい、紹介先に刺繍作品を持って行って商談をする機会を作っているそうです。

Gaki-Bizの紹介でイオンでの体験イベントにも出店。実際に刺繍機を持ち込んで実演を行いました。

「そこで出会った一人の女性が印象的だったんです。その方はお孫さんに服を縫ったお返しに絵を描いてもらったみたいで「この絵を刺繍にして残したい」と持って来られたんです。その絵をお借りして、後日刺繍にして郵送したらとても喜んでくださいました。刺繍を頼まれるお客さんの気持ちを初めて体感して、“「想い」を刺繍で「思い出」に”というコンセプトそのものだ!この事業やってよかったと心から思いました」

マルシェに出店している様子

マルシェなどにも出店することで、「マルニシ アトリエ刺繍」の認知度を高めたいと考えている中嶋さん。いくつかマルシェに出る中で課題も発見。

「マルシェには刺繍機を持っていけないので、出来上がった刺繍作品を持って行って並べているんですが、みなさん刺繍作品を販売するお店と思われているようで、自分たちのイラストや文字などを自由に発注して刺繍にしてもらえることには気づいてもらえないんです。マルシェのお店の見せ方にはもっと工夫がいるなと思っていて、そこを今後Gaki-Bizさんに相談したいと思っています」

刺繍は個人が気軽にオーダーできるものだということをもっと広めたい

『マルニシ アトリエ刺繍』の商品

中嶋さんは、「当社でのオーダーのもう一つの魅力は、1個からオーダーしてもらえることです。普通、シルクスクリーンプリントだと最低オーダーロッドって決まっていることが多いと思うのですが、刺繍の場合は、1個からオーダーが可能です。個人店の方でユニフォームやグッズ作成をしたい方にはピッタリなんじゃないかと思います」と事業の強みを話します。

還暦のお祝い品として販売予定のタオル

現在は、インスタやBASEなどから個人オーダーをもらいイラストをトートバックやハンカチに刺繍にするサービスがメインですが、将来的には、お店のロゴを刺繍にするサービスも受けていく予定。個人店から1点からのオーダーでも受けたいと考えているそうです。

「現在はまだ事業がスタートしたばかりで試行錯誤中ですが、刺繍の持つ可能性にも気づいてきたので、さらに事業を拡大していきたいです。これからもまだまだGaki-Bizさんにはアドバイスをもらいたいなと考えています」

まだ始まったばかりの『マルニシ アトリエ刺繍』の事業がどう展開されていくのか、今後が楽しみです。

マルニシ アトリエ刺繍

ホームページ https://marushishuu.base.shop/

SNS  https://www.instagram.com/marunishi6/