【株式会社リリフル】

経営初心者のピンチを救った、気づかなかった強み

岐阜県大垣市に企業主導型保育園「タッチテラス保育所」、「ドリームタッチ保育所」の2園を営む株式会社リリフル。代表取締役の金森律子さんは、2020年に「女性起業家大賞・スタートアップ部門奨励賞」を受賞するなど、ロールモデルとして西濃地区の女性起業家を牽引する存在だ。
大垣ビジネスサポートセンター(Gaki-Biz)という強力な伴奏者に導かれ、開業当時の逆境を乗り越えた金森さんは、保育園事業を軸に、日々葛藤の中で奮闘する「女性の伴奏者」としてチャレンジを続けている。

どう集客するか。その答えは自分の中にあった

「保育園を始めたんですけど、園児さんが集まらないんです」

2018年8月、初めてGaki-Bizを訪れた金森さんは開口一番そう切り出した。

同年の4月10日に舟町の「ドリームタッチ保育所」、大垣駅前の「タッチテラス保育所」をオープンしたものの、4ヶ月経っても両園あわせ30名の定員に対して園児はわずかに3名。どうにかしなければと周囲の人に相談する中、大垣市議会議員の長谷川毅さんから7月にGaki-Bizが立ち上がることを聞いた。

「目から鱗というか、棚から牡丹餅というか」

金森さんはGaki-Bizで受けた衝撃をそんな言葉で表現した。Gaki-Bizがどんなところか何も知らないまま駆け込んだが、「正田(嗣文)センター長は、『大垣市内の保育園で一番駅から近いですよね』『看護師さんが常駐している保育園は他にないですよね』と私たちの強みに着目してくださいました。なぜ園児が集まらないのかという課題に対する答えをいただけると期待していたのですが、実はその答えは自分たちの中にあったのですね」。

看護師として長年勤めていた金森さんは、出産を機に大垣市に移り住む。「少しでも赤ちゃんに良いものを」と、ベビーマッサージやベビーサインなど、色々な赤ちゃん向けの講座を受講。その後、自らの知識や経験を共有したいと講師の資格を取り、子育て中のママ向けの講座を開催して回った。たくさんのママや赤ちゃんと触れ合ううちに、次第に「いつか赤ちゃんに携わる仕事がしたい」という気持ちが芽生えていった。

パートの看護師として働いていた2016年、国は待機児童を減らす目的で「企業主導型保育事業」をスタートする。この事業に個人でも申請ができることを知った金森さんは、思い切ってチャレンジすることを決断。2018年に保育園設立の申請が採択され、2つの保育園を同時に開業した。

しかし、経営者としての経験は皆無。経営については、開業してから保育園運営をしながら、大垣商工会議所主催の「女性創業塾」で学んだ。

「Gaki-Bizでも経営の専門的な部分を指摘されるんじゃないかと身構えていたのですが、そうではありませんでした。私たちの事業の内容や質、携わっている人の中に光るものを見つけてもらえました。
これまでやってきたことに対しても、『いいですね』『いいですね』と肯定してくださるので、頑張ってきてよかったと救われる気持ちになりましたね。
そしてその上で、『じゃあ、ここはこう変えてみましょう』『こうしてみましょう』と先へ先へと導いてくれる。過去の問題点を指摘するのではなく、すごく未来志向。やる気スイッチを押してくれる場所だなといつも思います」

具体的なレベルでやるべきことを整理

やる気に火がついたところで、正田センター長は集客や認知度拡大のためにやるべきことを、具体的なレベルに落とし込んで示していった。金森さんは提案された施策を一つ一つ確実に取り組んだ。

 最初に着手したのは、「看護師常駐」「大垣駅に近い」という他の園にはない強みを盛り込んだプレスリリースを報道各社に送ること。すると早速数日後、新聞やケーブルテレビから取材依頼が入る。「まさか自分が新聞に載るなんて全く想像もしていませんでした。メディアに関する知識は全くなかったので、本当に勉強になりました」と照れ笑いをする。

 次に、準備を進めていたホームページもキャッチコピーを見直した。Gaki-Bizで引き出してもらった強みを反映することはもちろん、金森さんが保育園を立ち上げるに至った思いやこれまでの経験など、ママたちに共感、安心感を与えるストーリーを掲載したのも正田センター長のアイデアだった。

「きっとどこかが悪いからこういう結果になっていると分かってはいても、何が問題なのか、それをクリアするにはどう動いたらよいかは、自分一人ではなかなか見出すことができません。
Gaki-Bizの第三者な視点は新鮮ですし、しかも多様な業種と接点があるので様々な角度からアドバイスをもらえる。話をしているうちに、会社の良さ、ボトルネックを紐解いてくれるので、毎回「なるほど!」と感心しますね。
メディア発信の方法やPRの仕方、ホームページの見せ方に関しても、ピンポイントでやるべきことを明確にしてもらえたので、それを順次やっていくことによって自ずと成果が出てきました」

その言葉の通り、30件以上のお問い合わせがあり、26名の入園希望者が施設を見学。そのうち15名が入園し、Gaki-Bizを訪れてから約1ヶ月で両園ともに定員に達した。

子どもx働く女性のために、保育園の可能性を探る

保育園が軌道に乗ると、保育園立ち上げの動機にもなった「子育てをしながら働く女性を応援したい」「女性が活躍できる場所を用意したい」という使命感が湧き上がってきた。

「最近は本業である保育事業の拡大もそうなのですが、これからの保育園の新しい形を生み出していきたいと考えているので、それについてご相談することが多いですね。うちの保育園は企業主導型という役目を与えられているので、提携企業のために何かできないか、西濃地区を盛り上げるために何かできないかを考えています」

 2019年5月には、保護者の方から就職の相談を受けたことをきっかけに、働く意欲のある母親と企業をつなぐプロジェクトを設立する。女性にとってのGaki-Biz的な存在になりたいという願いを込め、「MAMA(ママ)ビズ」と名付けた。
立ち上げの段階からGaki-Bizに相談し、設立記念の「ママの社会復帰応援イベント」も共同開催。イビデンなど提携企業から1名ずつ育児・子育て中の女性社員を招いてグループセッションや個別相談会を行い、リアルな働き方や会社の福利厚生をありのままに語ってもらった。参加したママたちからは「生の声が聞けてよかった」「会社の雰囲気がわかって安心した」と好評を得た。手応えを感じた金森さんは「これからも続けていきたい」と意欲を見せる。
さらに2020年には「コロナ禍で保育園が休園になってしまい、仕事に行けなくなったパパやママがいることが心苦しくて」、訪問保育事業をスタートさせる。

Gaki-Bizのネットワークでプロジェクトの輪を広げる

 いまは、提携企業である印刷会社、サンメッセと進めてきたSDGs活動「マーブルクレヨンプロジェクト」をGaki-Bizのサポートを得て進めている。
小さくなったクレヨンを集めて加熱し、マーブル状のクレヨンとしてアップサイクル。これをサンメッセで不要になった紙とセットにして、巣ごもり中の子どもたちにプレゼントしようという企画だ。
2社を中心に始めたプロジェクトだったが、賛同してくれる企業や実際にクレヨンを制作してくれる事業者を募ろうとGaki-Bizに相談。就労継続支援事業所の参画が決まるなど、Gaki-Bizのネットワークを通じて、プロジェクトはより大きく育ち始めている。

「当初は子どもが作ったクレヨンを子どもへ届ける形を考えていたのですが、就労継続支援事業所にご協力いただけるのであれば、障害者のみなさんにも光が当たるような内容にしていきたい。Gaki-Bizと一緒に企画を考えているところです。正田センター長も『西濃一大きなプロジェクトにしましょう!』と意気込んでくださっているので、私たちもしっかりとやらなければと気が引き締まる思いです」

Gaki-Bizは心強い伴奏者

 起業してから4年目。「人の笑顔が広がっていく環境を見るのが何より幸せ」と次々と新しいことに挑戦し続ける姿勢が評価され、2020年には「女性起業家大賞・スタートアップ部門奨励賞」を受賞する。

「起業するなんて思ってもいなかった人生ですけど、Gaki-Bizや商工会議所のサポートのおかげでここまで来られました。ここまでの努力や皆さんの協力を無駄にしたくないので、次に何ができるのかをGaki-Bizに相談しながら、皆さんの期待に応えていきたいです」

 そして最後に金森さんは女性に向けて真っ直ぐな瞳で語りかけた。

「創業したいという人にとって、大垣はとてもバックアップ体制が整っています。商工会議所はどの自治体にもあると思うのですが、西濃地区にはGaki-Bizというもう一つの心強い伴奏者がいます。Gaki-Bizさんも4年目を迎えて、相談件数に比例して厚みや深みが増し、年々パワーアップしているように感じます。
私自身もそうでしたが、女性はライフステージの変化によって自分でも気がつかないうちにやりたいことを諦めてしまう部分があると思うんですね。でも何歳からでも遅いということはない。何かやりたいと考えている方はぜひ思い切って一歩を踏み出してほしいです」

【株式会社リリフル】
●ホームぺージ https://lilifull.co.jp/